院長の奥井です。
今回は精密な被せ物のための型取りについて 歯肉圧排(しにくあっぱい)の
説明をしたいと思います。
型を取る作業を歯科では印象採得(さいとく)といいます。
型取りもデジタル化し被せ物によってはスキャニングといい
撮影して被せ物を作製できるようになりました。
この場合、型取りが気持ち悪い患者様にはメリットになります。
しかし被せ物が限られる事と、歯茎の中までは撮影が難しく
被せ物を歯茎の中まで作りたいときは再現が難しいです。
スキャンの画像です。再現性は高いですが、歯茎との境目は
限界があります。しかし歯茎の中まで歯を削っていない場合は
十分再現ができます。
歯茎に中までと伊yとそこまで削るのかと不安に思われるかも知れませんが、
わかりやすい言葉で表現したまでで、歯科では歯肉縁下マージンといいます。
歯と歯茎の境目を歯肉縁といい上を縁上、下を縁下といいます。
マージンとは被せ物のふちになります。
縁上マージンの場合は、型取りの時に出血がなく綺麗に型取りができる
エナメル質が残るので虫歯になりにくいなど利点がありますが、
見た目が劣るという欠点があります。
また先ほどの事と反して歯磨きができていない患者様の場合、かえって
虫歯になりやすくなります。
画像は縁上マージンによる虫歯です。
縁下マージンの場合、見た目がよく(境目が見えない)前歯に
向いていますが、最大の問題は型取りの時に歯茎から出血し
型取りが難しいという事です。
当院の場合、自費診療の場合に限りますが「歯肉圧排(しにくあっぱい)」
と言う方法を用いて型取りを行なっています。
歯肉圧排とは歯茎の中に糸を入れる事です。もちろん麻酔をしますので
それほど痛みはありません。
糸を入れることで歯茎が押されて下がるため出血もせず綺麗に型が取れるのです。
画像は糸が入っている状態です。
装着した状態です。歯茎の境目で短い部分もなく
綺麗に入っています。
ここでのポイントですが「糸を2重に入れている」
いわゆるダブルコードと言う方法です。
糸を一周入れてから、さらにもう一周糸を入れ
型取りの時に一周のみ糸を外し型を取ります。
これは2つとも外してしまうと出血してしまうためで
糸が止血の働きになっているのです。
型取りの素材も保険診療では寒天とアルギン酸という素材を用いますが
寒天では歯茎の中の入った寒天がちぎれてしまうので、シリコンゴムを
用いています。しかしシリコンゴムは高価ですので自費診療での
使用となります。青矢印部分が歯茎の中の部分です。しっかり再現されています。
被せる画像ですがかなりしっかり入っています。
このように型取り一つも注意深く行わないと見た目を求められる場所の場合、
綺麗に再現できません。
お気軽にご相談下さい。