
お子様の受け口で迷ったら、まずは3歳頃を目安に状態を確認しましょう
お子様の受け口(反対咬合)は、乳歯が生えそろう3歳ごろが、歯医者さんに相談するひとつの目安です。ただし、3歳で相談したからといって、その場ですぐに矯正の装置を使った治療がはじまるとは限りません。歯並びやあごのバランス、お口の使い方を確かめたうえで、成長を見守る「経過観察」となることもよくあります。
この記事では、3歳ごろが目安とされるわけや、おうちで気づけるサイン、はじめての受診で確かめること、経過観察と治療をはじめる時期の考え方をまとめてお伝えします。
この記事の要点まとめ
- 受け口の相談は3歳ごろが目安です。噛み合わせや食べ方も、受診を考える手がかりになります。
- はじめての相談では、歯並びやあご・舌の動きを見ます。口を開けにくいときは、お話を聞くことから進めます。
- 治療をはじめる時期は原因や成長のようすで変わり、経過観察になることもあります。検査や費用の段階も確かめましょう。
- 子どもの受け口で3歳頃が相談時期の目安とされる理由と、受診を考えるサイン
- 相談では何を確認する?歯並び・顎の状態と口の機能
- 相談したらすぐ治療?経過観察と治療開始時期の考え方
- 受診前に整理したいことと、受け口以外も含めたお口の見守り方
- よくある質問(FAQ)
- 参考文献
- 監修
子どもの受け口で3歳頃が相談時期の目安とされる理由と、受診を考えるサイン
3歳頃を相談の目安にする理由と、治療開始の年齢は別に考える
3歳ごろが相談の目安とされるのは、上下の乳歯が生えそろって、噛み合わせのようすがわかりやすくなるからです。また、歯医者さんの雰囲気に少しずつ慣れて、診てもらえるお子様が増えてくる時期でもあります。3歳児健診で言われて、受診を考えるご家庭もよくあります。
ここで知っておきたいのは、「相談する時期」と「治療を始める年齢」は別であるという点です。下の前歯が前に出る受け口は、上あごや下あごの骨のつき方、前歯の生える向き、またはその両方が関わって起こります1。原因や育ちぐあいによって向いている時期がちがうため、年齢だけで治療をはじめる時期を決めることはありません。
当院でも、3歳頃のお子様で「受け口が気になる」とご相談をいただいた場合、まずはお口の状態や成長の様子を見ながら、すぐに治療を始める必要があるかどうかを判断しています。3歳ではまだ顎や歯が成長の途中にあり、今後の成長によって噛み合わせが変化することもあるため、受け口以外の歯並びについてはすぐに治療を行わず経過を見ていくケースも少なくありません。
一方で、受け口(反対咬合)は、単に前歯の位置だけでなく、上顎・下顎の成長や、舌・唇などのお口周りの筋肉の使い方、普段のお口の使い方などが関係していることがあります。早い時期に状態を確認することで、成長を利用した対応ができる場合もあるため、当院ではできるだけ早い時期に一度ご相談いただきたい噛み合わせの一つと考えています。
「乳歯だから様子見でよい」はどこまで当てはまる?よくある誤解
ご家族の間で「まだ乳歯だから生え変わりまで様子を見よう」という意見と、「早めに相談したほうがよい」という意見が分かれることがあります。確かに乳歯の時期の受け口は、成長や前歯の生え変わりに伴って自然に変化する場合もあります。
しかし、反対の噛み合わせがそのまま残るケースもあるため、何の情報もないまま生え変わりまで待つことには注意が必要です。「様子を見る」という選択自体は間違いではありませんが、それは現在のお口の状態を確認したうえで判断してこそ意味を持ちます。
そのため当院では、3歳頃に受け口が気になる場合は、「すぐ治療をする」ということではなく、まず一度お口の状態を確認することをおすすめしています。実際に診察してみて、すぐに治療を始める必要がない場合には、成長を見ながら定期的に経過を確認していきます。「まだ3歳だから」と様子を見るだけではなく、早めに相談しておくことで、今後どのように見ていけばよいのかが分かるという点も受診のメリットです。ご家族で方針を話し合うための材料を得る機会として、一度歯科医師の診察を受けておくと状況が整理しやすくなります。
受診を考えたい家庭でのサイン|噛み合わせ・食べ方・家族の歯並び
年齢の目安だけでなく、日常生活の中で見えるお口の様子も受診を考える手がかりになります。当院では、受け口や歯並びだけを見るのではなく、「しっかり噛めているか」「舌や唇をうまく使えているか」「飲み込み方に問題がないか」など、お口の機能や普段の使い方についても確認しています。ご家庭で次のようなサインや食べ方の様子が見られる場合は、歯科医院での確認を検討してみてください。
- 奥歯でカチカチと噛んだとき、下の前歯が上の前歯より前に出ている、または下顎を前に出して噛むことがある
- 前歯で食べ物をうまく噛み切れず、奥歯ばかりで食べようとする、または左右どちらか一方ばかりで噛んでいる
- 食べ物をあまり噛まずにすぐ飲み込んでいる(丸飲みしているように見える)、一口を噛む時間が短すぎる、または反対にいつまでも口の中で噛み続けている
- 普段や食事中にお口がぽかんと開いていることが多い、または食べこぼしが目立つ、食事中に姿勢が崩れている
- 話すときや、食べ物を飲み込むときに舌を前に出すような動きが気になる
- ご両親やご親族に受け口の方がいる
3歳頃のお子様は食べ方にも個人差がありますので、これらが当てはまったからといって、問題があるとは限りません。また、舌の動きの制限(舌小帯の付着状態など)と噛み合わせの関連については研究が進められている段階であり、一概に原因と決めつけられるものではありません2。ご家族に受け口の方がいる場合も遺伝だけで決まるわけではありませんが、骨格の成長傾向を知る参考になるため、受診時に伝えておきたい情報の一つです。
歯並びは、お口の機能や普段の使い方とも関係しています。「受け口が気になる」というご相談をきっかけに、お子様のお口の成長や機能について一緒に確認していきましょう。
ポイント
3歳頃の相談は「今すぐ治療を始めるため」ではなく、「このまま様子を見てよい状態かどうかを確かめるため」の機会として活用できます。
相談では何を確認する?歯並び・顎の状態と口の機能

骨格か歯の傾きかを見極めるための資料|口腔内写真・模型・セファロレントゲン
受け口は、上顎が小さい・下顎が出ているといった「骨格の位置」によるものか、前歯の傾きによるものかによって見通しが異なりますが1、お口の外から見ただけでは区別がつきにくいことがあります。そのため、歯科医院ではいくつかの資料を組み合わせて原因を調べます。
| 確認に用いる資料 | 調べられる主な内容 |
|---|---|
| 口腔内写真・顔貌写真 | 歯の重なり具合、噛み合わせたときの上下のズレ、口元のバランス |
| 歯型の模型 | 歯列の幅や形、上下の歯がどのように接触しているかの立体的な関係 |
| セファロレントゲン | 頭部全体を横や正面から撮影し、上下の顎の骨の位置関係や前歯の傾きを計測する |
当院では矯正歯科と同じように、お口の中の写真や歯型の模型、セファロレントゲン(頭部X線規格写真)を使って診断しています。ただし、こうしたくわしい資料は、治療をはじめるかどうかを決める段階で必要になるものです。3歳ごろのはじめての相談の日に、写真やレントゲン、型取りをすべて行うとは限りません。
お子様の年齢やその日のようすに合わせて、どの段階で資料をそろえるかを決めます。はじめての受診でどこまで調べるかは、前もってお問い合わせください。
歯並びだけでなく舌や食べ方、口の閉じ方も診る理由
子どもの噛み合わせを考えるうえでは、歯や骨の形だけでなく、お口周りの筋肉や舌がどのように働いているかも関係します。当院では、これらの資料による診断とあわせて、口腔機能発達不全症にも積極的に取り組んでいます。
そのため、受け口のご相談であっても、歯ならびやあごのようすに加えて、ふだんの舌の位置、食べ物を噛んで飲みこむ動き、くちびるを閉じる力といった「お口のはたらき」もあわせて見ています。なお、舌の動きにくさと噛み合わせの関わりについてはいくつか報告があるものの、はっきりした答えは出ていません2。歯のならびとふだんのお口の使い方をいろいろな面から知っておくことが、今のお子様のようすをていねいに知る手がかりになります。
口を開けるのを嫌がっても、初回の相談でわかること
3歳頃のお子様が、初めての歯科医院で緊張して口を開けられないことは決して珍しくありません。もし診察台で大きく口を開けられなくても、初回の相談が無駄になるわけではありません。
保護者の方からの日頃の食べ方や癖の聞き取り、横顔のバランスや口元の閉じ方の観察、笑ったときや話しているときに少し見える前歯の位置関係だけでも、歯科医師が把握できる情報はあります。無理に押さえて処置や検査を進めると、歯科医院への苦手意識につながりやすいため、その日はお口の観察と保護者の方への説明にとどめ、詳しい確認は慣れてから次回以降に回す進め方もあります。お子様が協力しにくい場合にどこまで確認できるか、予約時に伝えておくと当日がスムーズです。
相談したらすぐ治療?経過観察と治療開始時期の考え方

治療開始時期を左右する条件|原因・成長段階・お子様の協力
相談の結果、すぐに治療へ進まずに時期を待つことがあるのは、受け口の原因やお口の成長段階によって適した開始時期が異なるためです。たとえば骨格の成長バランスが関わる場合と、前歯の傾きが中心の場合では、検討される方法や時期が変わります。
子どもの受け口には、フェイスマスク(上あごの成長をうながす装置)やチンキャップ、取り外し式の装置など、いろいろな装置が調べられています。どの装置でも、治療をしなかった場合より噛み合わせがよくなる方向の結果が報告されています1。ただし、どの装置が合うかや、どれくらい変わるかには個人差があります。
また、子ども向けの矯正装置は、毎日決められた時間お口に入れておくなど、お子様本人の協力とご家庭での見守りが必要です。装置を無理なく使える年齢や気持ちの準備が整っているかも、開始時期を決める大切な条件になります。
経過観察になったとき、何を見ながら次の相談につなげるか
歯科医師から「経過観察にしましょう」と言われた場合、それは何もせずに放置するという意味ではありません。顎の成長や、6歳頃から始まる前歯の生え変わりのタイミングを見据えて、治療が必要かどうかを改めて判断するための期間です。ご家庭では、食事中の噛み方や口元の写真を数か月おきに残しておくと、変化を比べる参考になります。
また、成長期に乳歯をむし歯などで早い時期に失うと、後から生える永久歯の噛み合わせに影響が及ぶ可能性が報告されています3。経過観察の期間中も、乳歯を健康に保ちながら定期的にお口を見せることが大切です。次の受診までの間隔はお子様の状態によって異なるため、受診時に目安を確認しておきましょう。
相談・検査・治療の費用は段階ごとに確認しておく
子どもの矯正相談を受ける際は、費用の仕組みが「初回の相談」「精密検査・診断」「実際の治療(装置代や毎回の調整料)」のように段階ごとに分かれているケースが多く見られます。相談の段階で治療費がかかるかどうかは、事前に確認できます。どこまでが相談の範囲で、どの段階から検査料や診断料がかかるのかを前もって知っておくと、家計の見通しを立てやすくなります。
なお、子どもの歯並びの矯正は、一部の生まれつきの病気などをのぞき、健康保険が使えない自由診療です。当院では、矯正診断料が33,000円(税込)、ムーシールド・T4Kなどの装置が55,000円〜330,000円(税込)、ワイヤーの調整料が3,300円(税込)です。
小児矯正から大人のワイヤー矯正へ進む場合は、440,000円(税込)となります。お子様にどの装置が合うかによって費用は変わるため、診察のうえで内訳をお伝えします。
矯正治療には、一般的なリスクもあります。装置をつけた後しばらくは違和感や痛みが出ることがありますが、多くは数日から1〜2週間ほどで慣れていきます4。また、装置に慣れるまでは、頬の内側がこすれて口内炎ができることがあります4。
装置があると歯みがきがしにくくなるため、むし歯や歯ぐきの炎症にも気をつける必要があります。取り外し式の装置は、決められた時間使わないと、思ったような変化が出にくいこともあります。
ポイント
相談・検査・治療は段階が分かれています。初診の場で治療を決める必要はないため、まずは現状の把握と費用の段階を確認することから始めましょう。
受診前に整理したいことと、受け口以外も含めたお口の見守り方
受け口の相談とあわせて考えたい、成長期のお口の管理
お子様の噛み合わせは、乳歯から永久歯へと生え変わる長い期間をかけて変化していきます。乳歯の早期喪失が永久歯列の不正咬合に関わるという知見もあるように3、歯並びの見守りと日常のむし歯予防は切り離せません。当院では、一般歯科ならではのむし歯や歯肉炎などの管理を行いながら、小児矯正から成人矯正までスムーズに移行できる体制を整えています。
歯科医師に伝えたいことメモ|気づいた時期・家族の歯並び・食べ方の様子
初めての相談では、限られた時間の中で聞いておきたいことを忘れないよう、事前にメモを準備しておくのがおすすめです。以下の項目を整理して持参すると、歯科医師に普段の様子が伝わりやすくなります。
- 受け口が気になりはじめたころや、3歳児健診などで言われたこと
- ふだんの食事のようす(前歯で噛み切れるか、丸のみしていないか)や、お口がぽかんと開くくせがあるか
- 指しゃぶりや爪かみ、下くちびるを噛むなどのお口まわりのくせ
- ご両親やきょうだいなど、ご家族の歯並びの傾向や矯正をしたことがあるか
- 当日聞きたいこと(経過観察になったときの通うペース、検査に進む目安、費用の段階など)
診察室でお子様が緊張して普段通りに噛めないこともあるため、ご家庭でリラックスしているときの噛み合わせや口元の写真をスマートフォンで撮って持参するのも一つの方法です。
名古屋市北区で下の子を連れて受診するときに確認したいこと
下のお子様(赤ちゃん)を連れて上の子の相談に行くときは、通いやすさや院内のようすも前もって見ておきたいところです。当院は名古屋市北区の地下鉄黒川駅から歩いて10分で、駐車場と院内のキッズスペースがあります。診療時間はアクセスページ(https://okui-dc.jp/access)でご確認ください
小さなお子様を2人連れて受診する際は、予約のときに次のことを歯科医院へ伝えたり、たずねたりしておきましょう。「0歳の下の子も一緒に連れて行くこと」「ベビーカーでそのまま入れるか」「初回の相談にかかるおおよその時間」「もし上の子が口を開けられなかった場合の進め方」です。前もって伝えておくと、当日の負担を減らして落ち着いて相談に臨めます。
よくある質問(FAQ)
Q. 反対咬合の治療はいつから始めればいいですか?
A. 治療をはじめる時期は、お子様ごとに歯科医師と相談して決めていきます。受け口の原因(骨のつき方か、歯の向きか)やお子様の育ちぐあい、装置をきちんと使えるかによって変わるためです。まずは3歳ごろに一度お口のようすを見てもらい、早めにはじめるか、前歯が生えかわるころまで様子を見るかを歯科医師と話し合って決めていきます。
Q. 3歳の初診でお子様が泣いて口を開けられなかったら、その日は何もわかりませんか?
A. 大きくお口を開けられなくても、保護者の方からの聞き取りや、お顔のバランス、話したり笑ったりしたときに少し見える前歯の重なり方から、ある程度の傾向を把握することは可能です。無理に検査をせず、まずは歯科医院の環境に慣れることから始める場合もあります。
Q. 相談に行ったら、その場で治療を始めるかどうか決めなければいけませんか?
A. はじめての相談の日に、治療をはじめるかどうかを決める必要はありません。相談でお口のようすやこれからの見通しを聞き、おうちに持ち帰ってご家族で話し合ってから、くわしい検査や経過観察に進むかどうかを決めていただけます。
参考文献
1. Owens D, Watkinson S, Harrison JE et al. Orthodontic treatment for prominent lower front teeth (Class III malocclusion) in children. The Cochrane database of systematic reviews. 2024. PMID: 38597341. DOI: 10.1002/14651858.CD003451.pub3
2. Póvoa-Santos L, Lacerda-Santos R, Alvarenga-Brant R et al. Ankyloglossia and malocclusion: A systematic review and meta-analysis. Journal of the American Dental Association (1939). 2024. PMID: 37999659. DOI: 10.1016/j.adaj.2023.09.014
3. Shakti P, Singh A, Purohit BM et al. Effect of premature loss of primary teeth on prevalence of malocclusion in permanent dentition: A systematic review and meta-analysis. International orthodontics. 2023. PMID: 37832339. DOI: 10.1016/j.ortho.2023.100816
4. 矯正歯科|診療科|診療科・部門|日本歯科大学附属病院. https://www.tky.ndu.ac.jp/hospital/departments/section/orthodontics.html
5. 歯科口腔外科. https://hosp.twmu.ac.jp/departments/dentistry.html
1995年4月名古屋市山田歯科医院 勤務
1997年3月藤田学園保健衛生大学歯科口腔外科 研究生
1999年9月おくい歯科 開業
2007年現在地に移転
2015年医療法人 爽誉会 設立
名古屋市北区歯科医師会理事
63歯科研究会会員
ST歯科研究会会員
日本口腔インプラント学会会員















