院長の奥井です。
今回は針金の代わりに磁石を用いた入れ歯について
説明したいと思います。
磁石を用いた入れ歯については以前投稿しました。
今回はその補足として説明させていただきます。
3年ほど前より磁石を針金の代わりとして用いる
磁性アタッチメットが保険導入されました。
初めのうちはその磁石自体が入荷に1か月かかるなど
流通に困りましたが、今は割と早く入荷できるようになりました。
ただ磁石自体が保険適応のものと保険適応外のものとあります。
磁力に若干違いがあるかも知れませんが、磁石自体もサイズがあり
大きな歯ですと大きなものを選べ、もちろん磁力も上がります。
磁性アタッチメントの一例を説明します。
線を引きましたように矢印の歯が少し飛び出しており
上が総入れ歯なのですがそこに強く当たるため上の入れ歯が
回転してしまいます。総入れ歯が全ての歯が均等に当たっていないと
外れてしまいます。
そのため矢印の歯を磁性アタッチメントにして高さを低くする計画を立てました。
磁石は入れ歯に埋め込むため、磁石をくっつけるための鉄の板を
歯に入れる事が必要で、その鉄の板を含んだ装置をキーパーと
呼びますが、キーパーを入れていきます。
まずやむを得ないのですがキーパーを入れるためには
その歯の神経を取らないといけません。
神経を取る事は歯の感覚がなくなり、虫歯になっても
気づかなかったり、また歯が乾燥して歯が割れやすくなります。
しかしこの歯の場合は、歯を支える骨が下がっており
針金で引っ掛けることで「栓抜き」の作用が働き寿命が短く
なります。磁性アタッチメントにすれば「栓抜き」の作用は
弱くなります。
ですからやむをえず神経を取る処置をしました。
神経を取った後に歯を削って短くします。
次にドリルで棒を差し込む穴をあけます。
削り終わった状態です。ここにキーパーを
装着します。
キーパーの画像です。
真ん中にステンレスが入っており
入れ歯に埋め込む磁石をくっつくようになっています。
歯を削ったわけですので元々そこについていた針金を
取り、入れ歯の歯を足さないといけません。
画像のようにくり抜いた部分に矢印の人工歯(入れ歯の歯)を
接着させます。
人工歯が追加された状態です。
磁性アタッチメントのメリット、デメリットは以下になります。
磁性アタッチメントのメリット
①クラスプ(針金)に比べ揺さぶられが少なく歯が長持ちする
②クラスプにくらべ入れ歯の歯になるため見た目が良い
③クラスプにくらべ取り外しが楽、クラスプは時には頬や舌に当たったりして
傷つけることがあるが、その心配がない
磁性アタッチメントのデメリット
①根っこに差し込むため神経の取ってある歯が適応であり、神経を
取らないといけない
②根面版の背が低いため歯みがきがしにくい 歯みがきを忘れてしまうことあり
虫歯のリスクがある
③MRIを撮影するとき義歯を外さないと磁力がなくなってしまう
④磁石の磁力がずっと持つわけではない
よく相談されて決められることをお勧め致します。